ビットコインの価格は9000ドル=95万円(2018/3/22)となっています。
12月くらいから見ていた人にはまあこんなもんかな、という印象じゃないでしょうか。
しかし、2017年の1月くらいから見ていた人にはまだ高いと思うかもしれません。
このように高い安いというのは人によるわけですが、ここでは理論的に調べてみます。
ビットコインのバリュエーションと本質的価値とは
ビットコインは高いのか安いのか、これはずっと議論されてきた事です。
株や他の資産でも同じような議論はできます。しかし、特にビットコインでこういった議論が多いのはビットコインの価値が一体なんなのかよくわからないからでしょう。
ビットコインは「偽造できないという信頼」が価値を与えているのでしょうが、こういったものはなかなか数値化できないため、価値を計算するのは難しいのでしょう。
実際、金融のプロもこういった問題を解決できず、ビットコインの価値に懐疑的な人は多いのです。
ちょっと調べただけでもビットコインに関して、プロの投資家のネガティブな発言が見つかります。
「われわれの考えでは、ビットコインの内在的価値はゼロだ」
アリアンツ・グローバル・インベスターズ シュテファン・ホフリヒター氏
Bloomberg『ビットコインは無価値、バブル今にもはじける-アリアンツ運用部門』より
「本質的価値がない。それが何であるかを私は知らないし、本質的価値に関するわれわれの定義に基づく本質的価値はない。投機や投資の対象とする誰かがいたとしても、それは別の誰かであって私たちではない」
ブルックフィールド・アセット・マネジメント ブルース・フラット氏
Bloomberg『「本質的価値」ないビットコインに興味なし-加ブルックフィールド』より
一方で市場で高い価値が付いているということは、ビットコインに価値があると思っている人も多いという事でしょう。
そこで、今回はビットコインの価値を考えたいと思います。
ビットコインの価値の計算(メトカーフの法則)
メトカーフの法則というものをご存知でしょうか?
イーサネットを発明したロバート・メトカーフ氏が提唱した理論で、「ネットワーク通信の価値は、そのネットワークに接続されているユーザー数の二乗に比例する」というものです。
式で書くとこんな感じです。
$$(ネットワーク通信の価値)=a*(ネットワークに接続されているユーザー数)^2$$
これをビットコインに応用すると、ビットコインの価値は、使用しているユーザーの数の2乗に比例する、と言えそうです。
式にするとこんな感じです。
$$(ビットコインの価値)=a*(ビットコインユーザーの数)^2$$
ここで、ビットコインの価値は時価総額で表されます。
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3分でわかる!仮想通貨の時価総額(Market Cap)とは?
また、実際にビットコインのユーザー数というものはわかりませんので、アクティブユニークアドレス数というものを使います。
ビットコインは1ユーザーにつき複数のアドレスを持っているでしょうから、実際は2乗よりも乗数が小さくなる事が想定されます。
そのため、乗数は2以下の数、xで表して、以下のようになります。
$$(ビットコインの時価総額)=a*(アクティブユニークアドレス数)^x$$
ここで、まず両辺対数をとります。
$$log(ビットコインの時価総額)=log(a)+x*log(アクティブユニークアドレス数)$$
これは直線の式になっているという事がわかります。
実際、両辺対数をとると、以下のようにまあ直線になっています。
ビットコインのユニークアドレス数と時価総額
さて、ここで回帰分析を行います。
簡単に言うと、上の図にそれっぽい直線を引く作業です。
実際に行うと、ピンクの直線が引かれました。大体当てはまっている事がわかります。
ビットコインのユニークアドレス数と時価総額(回帰分析)
理論値は以下のようになりました。
$$(ビットコインの時価総額)=12.42*(アクティブユニークアドレス数)^{1.63}$$
$$R^2=0.928$$でした。
ビットコインは高いのか安いのか
ビットコインのユニークアドレス数と時価総額(回帰分析)
もう一度図を載せます。
また、わかりやすくするために、2013年のバブルと言われていた時期、そして2017年のバブルといわれていた時期と、そのバブルが弾けたと思われる2018年1月中旬から2018年3月までの時期をそれぞれ赤、緑、オレンジで色を付けました。
ピンクの直線よりも上にある場合が理論値よりも高い、下にある場合が理論値よりも低いという事を表しています。
先ほどの期間では全て、理論値よりも高い=割高といえる状態でしょう。
また、興味深いのは、バブルが弾けた後も依然としてビットコインの時価総額は理論値を上回っているという事でした。
つまり、メカートフの式で計算すると、バブルが弾けたと思われる現在でも価格は高いという事です。
直近のアクティブユニークアドレス数から計算した理論価格
では今の理論価格はどんなものなのか、という事を計算します。
アクティブユニークアドレス数は2018/1/4に約105万件となってから減少し、最近は横ばいとなり、3/19の時点では42万件となっています。
そこで、下限を直近の42万件、上限を105万件とします。
ビットコインのアクティブユニークアドレス数の推移
また、ビットコインの総数は16,928,925枚(2018/3/19)としました。
すると下限は1ビットコインは1,060ドル、12万円程度と計算されます。
また、上限は1ビットコインは4,714ドル、49万円程度と計算されます。
逆にアクティブユニークアドレス数が150万件あった場合、理論価格が8,400ドル、つまり88万円程度と、まあ最近の価格となります。
そのため、現在の価格分の価値を得るためにはピーク時のさらに1.5倍もの参加者が必要と計算されます。
結論
①ビットコインの価値はメトカーフの法則で割と説明される。
②メトカーフの法則から導いた理論値から比べると現在は割高
③メトカーフの法則から導ける適正な価値は12~49万円
*グラフはすべてblockchain.infoのデータより当サイト作成